山月記の真実〜恐怖!叢に現れた全裸中年男性〜

 叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰返しつぶやくのが聞えた。その声に袁傪は聞きおぼえがあった。驚懼きょうくの中にも、彼は咄嗟とっさに思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」[...]

ややあって、低い声が答えた。「如何にも自分は隴西の李徴である」と。

――中島敦山月記

山月記のあまりにも有名な、冒頭の一節である。

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